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サロン経営は夢と現実の間に多くの課題が立ちはだかります。一人でサロンを切り盛りするには、ただ技術があるだけでは不十分です。
- 経営が上手くいかず、収益が安定しない
- 長時間労働で過労気味
- やりたいことができず、モチベーションが低下している
今回の記事では、一人サロン経営で陥りがちな落とし穴と、回避するための具体的な方法を解説します。計画性と適切な対策で、安定した経営を実現するための第一歩を踏み出しましょう。
- 一人美容室が失敗する原因とその詳細
- 廃業を防ぐための具体的な対策
- 経営を成功させるためのポイント
一人サロンの失敗とは?


廃業に至る理由は大きく3つあります。経営難、働き過ぎによる過労、やりたい事ができない事によるモチベーションの低下です。
経営難
サロンに限らず、ビジネスのおける失敗の結果は廃業です。一人サロンでは、スタッフの人件費が無い、規模が小さいため開業に必要な資金が少ないなどの理由から、廃業に至るケースは少ないです。しかし、材料費や経費計算、集客にかかるコストなどを始めとした資金繰り、事業の先を見通した計画を緻密に立てなければ、廃業のリスクが高まってしまいます。
サロンの廃業で最も恐ろしいのは、廃業時にオーナーが負債を抱えてしまうリスクです。一人サロンといえど開業には少なくても500万円以上の多額の資金が必要になります。多額の資金を調達するために融資を利用した場合、返済が必要になります。無担保無保証の融資であればオーナーに負債が行くことはありませんが、保証人が必要な融資でオーナーが保証人の場合、廃業後に残った融資の返済はオーナーの負債になってしまいます。
過労
サロンオーナーとしての生活は、想像以上に体力と精神力を要求されます。長時間労働が常態化し、休暇を取ることなく働き続けると、自身の健康を害するだけでなく、家庭環境やサロンのサービスにも影響が出かねません。自分が望んで毎日忙しく働いている場合は良いのですが、生活や売り上げのために忙しくせざるを得ない場合は注意が必要です。
忙しく働いている分売り上げがあるため、すぐに廃業とはなりません。しかし、精神的・肉体的に負荷がかかり続けている状況では、自身が消耗してしまいます。そんなオーナーのサロンは長続きせず、どこかのタイミングで崩れてしまう恐れも。不安定な状況では、一人サロンが成功とは言えないでしょう。
やりたいことが出来ない
自身がやりたいようにやる、好きなメニューに特化して営業するといった動機で一人サロンを開業する方も多いのではないでしょうか。しかし実際に開業してみると思ったように利益が出ず、自身がやりたかったことと違う方向に進んでいる場合もあります。
せっかく開業したのに、結局やりたくないけど利益が出るメニューばかり予約が入ってしまっている。もちろん利益が出ており、生活にも困らないのであれば、目に見える失敗ではありません。しかしこれでは成功とも言いづらいですよね。筆者の知り合いでは実際に廃業してフリーランスになった方をお見かけしたことがあります。
失敗の原因とは?


一人美容室の経営で失敗する原因はさまざまですが、その中心には計画性の欠如があります。成功するサロンは市場のニーズを深く理解し、競合との差別化を明確に打ち出しています。それでは、失敗するサロンに共通する具体的な要因を見ていきましょう。
原因①見通しの甘さ
経営計画の不備や市場分析の不足は、見通しの甘さとなって表れます。例えば、過剰な借入による資金繰りの失敗や、現実的でない売上目標の設定は、計画失敗の典型例です。また、お客様のニーズ変化や新たなトレンドへの対応が遅れることも、見通しの甘さと言えます。実際の市場動向に基づいた柔軟な計画を立てることが、サロンの持続可能な成長には不可欠です。
特に材料費などの経費計算は失敗に直結するため、どんぶり勘定ではなく正確に行いましょう。サロン経営はビジネスです。お金に関する計算は、サロンの成長につれて大きな額になっていきます。はじめのうちからどんぶり勘定をしてしまうと、正確な計算をする癖がつかなくなってしまうため、絶対にやめましょう。
事業計画書をしっかり書くことで回避できる失敗もたくさんあります。


原因②競合対策が出来ていない
意外と出来ていない方が多い競合対策。競合との差別化に失敗すると、サロンはお客様の奪い合いに巻き込まれます。例えば、近隣のサロンと全く同じサービスを提供している場合、お客様は価格やアクセスの良さだけで選ぶようになり、利益率は低下します。競合との差別化は、特定の技術やサービスの専門性、サロンのコンセプト、個人的な顧客サービスなど、多方面での工夫が必要です。
売り上げを取り合う競合の対策は、ビジネスにおいて必要不可欠。もし対策の仕方が分からない、競合の基準が分からないといった場合には、経営支援を行っている無料の相談所や、美容専門のコンサルティング会社に依頼するのも一つの手です。
原因③集客不足からくるお客様不足
集客戦略が不十分だと、お客様の獲得が難しくなります。集客サイトへの掲載をせず、自身のSNSのみで集客が成功する事例は非常に稀。SNS広告に対する知見と戦略が無ければなかなか成功しません。広告費はサロンの運営において必要な経費です。集客サイトへの掲載やSNS、看板、チラシなどの広告は手を抜かずに実施しましょう。
原因④価格設定が不適切
サービスの単価を適切に設定できていない場合、サロン運営に大きな支障が出ます。競合店との差別化やお客様へのサービスとして単価を低く設定しすぎると、薄利多売でしか運営ができず自身の消耗に繋がります。反対にサービスへの自信や、利益追求のため単価を高く設定しすぎると、お客様に受け入れられず売り上げが不足してしまう場合があります。価格設定は市場調査とお客様の価値認識を踏まえたうえで行いましょう。
原因⑤経費の管理
経費管理はビジネスの成否を直接左右します。失敗で特に多いのが、家賃と材料費が高すぎること。家賃は毎月必ずかかる経費です。自身の予算に合わない物件を選んでしまうと、ずっと予算以上の経費を払い続けなければなりません。また材料費も、サービスのため採算度外視で高い材料を使用したメニューを低価格で提供してしまい、利益にならないというサロンが見受けられます。
「美容が好きでお客様に提供したい」という熱い思いは重要ですが、どんぶり勘定ではなく、利益率まで考慮した価格設定を行いましょう。一人サロンにおける材料費は売り上げの10%ほどが適正だと私は考えています。


原因⑥病気・怪我
最後に、経営者自身の健康問題も大きなリスクです。病気や怪我が原因でサロンを閉めざるを得なくなるケースも少なくありません。そのためには、日々の健康管理と、万が一のための保険の加入が必須です。適切なワークライフバランスを保ち、ストレス管理にも注意を払うことが重要です。
失敗しないためには?


失敗のリスクを減らすために、事前に計画を立て、マーケティング戦略を練り、経営に関する知識を身につけましょう。また、万が一のリスクに備えて保険に加入することも大切です。
対策①緻密に計画を立てる
成功するサロンは、すべて計画から始まります。自身のやりたいこと・やるべきこと・やりたくないことを洗い出し、市場調査を行い、自身の強みを活かしたコンセプトを作成し、価格設定を行い、オープンを迎えます。オープン後も経費のかけ方、売り上げの立て方、目標に向かっての動きなど、ゴールまでの道のりを計画にまとめましょう。
計画段階では資金計画や経費計算など、面倒なお金の計算も多々発生します。今までやったことがない経営計画も行わなければならなりません。一人ですべての計画を立てるのは不安になる方も多いでしょう。そんな時には、各市区町村で行っている経営支援窓口に相談をする・コンサルティング会社に支援の依頼をするという手もあります。
対策②広告を出す
集客はサロン経営において最も重要と言ってもいいでしょう。お客様がサロンを選ぶ選択肢の中に入らなければ、お客様は来ません。お客様の選択肢に入るためには広告を出し、サロンの存在をアピールする必要があります。たとえばSNSを活用したビフォーアフターの写真投稿は手軽に始められます。
また、集客サイトへの掲載は行いましょう。多くの集客サイトには予約機能もあるため、お客様の予約管理も行えます。
私のおすすめはホットペッパービューティーの低価格プランです。高価格のプランをいきなり使うのではなく、低価格プランで最大限の集客を行えるようにサロンページを作りこむと、後にサロンが大きくなった場合も対応できます。
また、一人サロンの場合では、高価格プランの費用が大きな負担になってしまいます。まずは低価格のプランを使用してみてはいかがでしょうか。


対策③経営を学ぶ
経営には美容の知識とは別の専門的な知識が必要です。セミナーやワークショップに参加し、経営に関する知識を常にアップデートしましょう。市区町村が主催しているセミナーでは、無料で経営の基本を学べる場合もあります。経営に関する無料相談窓口もあるため、経営に関する疑問が出たら一度相談しに行ってみてください。
他のサロン経営者から実際の経験談を聴くことが出来れば理想的です。サロンならではの経営に関する悩みが相談できるかもしれません。また、美容業界専門のコンサルティング会社もあるため、必要があれば相談してみてください。
対策④失敗から学ぶ
他人の失敗から学び、自分の経営に生かすのも重要です。例えば、サービスの失敗談からお客様満足度を高める方法を学んだり、在庫管理の失敗から効果的な在庫管理法を考案するなど、失敗は貴重な学びの源泉となります。失敗談を他人事と考えずに、自サロンでも起こるかもしれないと教訓にしましょう。
また、自身の失敗についても同様です。サロンの失敗は小さな積み重ねから起こります。少しでも「失敗かも」と感じたら一度立ち止まり、振り返りと反省を行い次につなげるようにしましょう。すぐに修正ができれば、大きな失敗にはつながりません。
対策⑤保険に入る
どんなに計画が完璧でも、予期せぬ事態は起こり得ます。病気や怪我、設備の故障といったリスクに備えて、適切な保険に加入しておきましょう。急なけがや病気で働けなくなった際にも、保険により自身の生活とサロンを守れます。


まとめ
サロンを一人で経営することは、計画性、適応力、そして持続可能な戦略が不可欠です。廃業のリスクを減らし、自身の健康を守るために、市場と競合を分析し、目的に合った広告戦略を立て、継続的な学習を心がけましょう。また、リスク管理として保険への加入も重要です。
一人美容室以外のサロンが経営に失敗する理由も知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。


よくある質問
集客のために最も重要なポイントは何ですか?
集客を成功させるには、ターゲットとなる客層を明確にし、コンセプトを策定、客層に合わせたマーケティング戦略を練ることが最も重要です。例えば、若い世代をターゲットにする場合は、SNSを利用したビジュアルに強い広告やサービスの提供が効果的です。


低単価で多くのお客様を獲得する戦略は有効ですか?
低単価戦略は一時的に顧客数を増やしますが、一人サロンには不向きです。一人サロンでは一日に対応できるお客様の数に限りがあるため、低単価戦略だと売り上げも低くなります。また、薄利多売になると自身の消耗にもつながります。単価を下げて集客するのではなく、サロンのコンセプトや施術のレベルなどから独自性を打ち出し集客するようにしましょう。


一人サロンの開業と、シェアサロンでのフリーランスで迷っているのですがどちらが良いですか?
一人サロンとシェアサロンのどちらにも、メリットとデメリット、向き不向きがあります。一人サロンとシェアサロンに焦点を当てた記事もございますので、こちらの記事を読んでいただければ幸いです。


集客面で一人サロンでも大型サロンに対抗できますか?
お客様のターゲットをずらすことで十分に対抗できます。ターゲットとなる客層の選定とコンセプトを適切に設定できれば、お客様を呼び込めます。また、大型サロンにはないサービスの提供や独自の価値を高めるとより良いでしょう。


