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美容師として独立し、一人美容室を開業することは多くの美容師の夢です。しかし、その道のりは単純ではありません。
- 安定した収入を得るために必要な客数がわからない
- 開業に必要な資金がどれくらいか知りたい
- 資金調達の方法が不安
まずは安定した経営に必要なお客様を集めましょう。この記事では、安定した収入を得るための基準や独立に必要な資金、客数と経費を解説します。
- 一人美容室として独立するための必要な客数とその理由
- 開業資金の内訳とどれくらいの費用がかかるか
- 資金調達の具体的な方法
固定客はどれくらいいれば安心?


よほど低単価出ない限り、大体300人のお客様がいれば、一人美容室としてフルタイムで安定した仕事続けられます。
3ヶ月周期で月100人、1日平均5・6人
総客数を300人と仮定した場合、3ヶ月ごとに100人の異なるお客様が来店する計算になります。営業日数は20数日とした場合、1日平均で5~6人のお客様が必要です。美容室の営業時間や施術にかかる平均時間を考慮した場合、これは一人の美容師が無理なく対応できる人数です。
美容師としての技術はもちろん、お客様とのコミュニケーション能力も集客力の一部です。実際、私がリクルートでホットペッパービューティーの営業をしていた際、成功している美容師の多くは、技術だけでなく、お客様との信頼関係を築けていました。
また、季節やイベントに合わせたプロモーションを行うことで、新規集客とリピート率の向上が期待できます。春の卒業式や入学式、夏には結婚式。イベントに合わせたヘアスタイルの提案を行うことで、お客様のニーズに応えられます。
集客サイトを活用した集客方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


総客数100人以下だと美容師専業での独立は難しい


月間のお客様が100人以下の場合、収入面での不安定さが大きいため、専業美容師として独立することは困難です。100人以下の場合の収入の実態と、解決策を解説します。
月商50万円だと残る手取りは20万円程度
総客数が100人以下で月商50万円以下の場合、地域ごとに固定費は変動しますが、家賃や材料費、水道光熱費などの経費を差し引いた手取りは大体20万円以下となります。これでは生活費や将来のための貯蓄を考えると厳しい状況です。
私の経験上、お客様を増やして収入を安定させるためには、自分の美容室の強みを活かしたサービスが必要です。たとえば、エクステやハイトーンカラーに特化した技術を持っている場合、その技術を前面に押し出したプロモーションをしましょう。他の美容室との差別化して集客力を高める工夫が必要です。
自分のコンセプトを作り込むことで伸びる可能性はある
サロンのコンセプトをしっかりと作り込むことで、総客数100人以下でも美容師専業での独立が成功する可能性はあります。
コンセプトが明確な美容室はお客様の記憶に残りやすく、口コミでも拡散されやすくなります。たとえば環境に優しいオーガニック製品のみを使用する美容室や、アート作品の展示を行う美容室など、他にはない独自のサービスは特定のお客様を強く引きつけるでしょう。カフェと併設などの美容室も見かけます。
コンセプトづくりについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


一人美容室の必要経費は?


一人美容室の経営には様々な経費が発生します。一人美容室の経営において考慮するべき経費項目について詳細に解説します。
かかる費用は500~600万円から


サロンを開業するには、様々な費用が発生します。一人サロンの場合、個人の資金力に限りがあるため資金の使い道を正確に知り、計画的に予算を組む必要があります。運転資金と設備資金に分ける理由は事業計画書を書くため。開業にあたって融資を受けるためには、事業計画書が必須です。


運転資金
運転資金とは、事業活動を継続的に行うために必要な資金です。具体的には、広告費や日々の経費、売上が少ない創業期の人件費などをカバーする資金です。
イメージとして、継続的にかかる事業運営に必要な資金です。ホットペッパービューティーなど予約サイトでの広告、また初期の売上が安定しない期間には、自身の生計を支えるための運転資金を確保する必要があります。
設備資金
設備資金は、開業の際、物件の内装や必要な機材、薬剤などの初期投資に必要な資金です。具体的には、シャンプー台、椅子、鏡、ドライヤー、内装の工事、初期のカラーリング剤やパーマ液などの薬剤購入費用が該当します。
機材や内装の工事は数百万円の予算が必要となります。店舗のテーマやコンセプトに合わせた内装を考える場合は、デザイナーや施工業者との打ち合わせに伴う費用が発生します。イメージとしては、一度で払いきり・形として残るものの購入にかかる資金です。
設備資金とは?


美容室の開業に必要な設備資金は、サロンの設備や初期の材料購入にかかる資金です。サロンを開くのに必要な土地の初期費用など、開業する上で絶対に欠かせない資金です。
物件取得費
継続的にかかる家賃は運転資金になりますが、一番最初にかかる保証金や手数料などは設備資金となります。物件取得費に関しては、開業する地域や物件の広さによって大きく金額が変わります。
基本的に保証金や手数料は家賃〇か月分という計算になります。都心部では一坪当たりの金額が高額になるため家賃も高額なため、取得費用も高額になります。自身の資金力と狙う客層に兼ね合いをつけて決めるようにしましょう。
費用としては、保証金、礼金、仲介手数料、保証会社手数料、合わせて家賃の10~12か月分を想定しておきましょう。
内装
サロンの内装は、お客様がサロンに入った瞬間の第一印象を大きく左右します。快適な空間にすると、リピーターを増やす効果も期待できます。
内装のコストは、選ぶ素材やデザイン、サロンの広さによって変わります。例えば、天然の木材を使用した高級感のある内装や、特定のテーマに沿ってデザイナーと一緒に作り上げる内装は、一般的な内装よりも費用がかかるでしょう。最初から完璧な内装を求めるのではなく、段階的に改装していく方法もあります。
また、家具などのインテリアだけでなく、壁や扉、シャンプー台などの設備も内装にあたります。バックヤードの壁を作ったり水道管の配置、電気設備の工事など、開業にあたって最も費用がかかります。
使用する薬剤
薬剤はサロンのサービスを左右する重要な要素です。有名な薬剤を使用することで、お客様から一定数認知を得られる上、施術後の仕上がりの品質も向上します。
薬剤の価格は、ブランドや成分、品質によって異なります。例として、オーガニック成分を使用した薬剤や、アレルギーテストをクリアした薬剤は、一般的な薬剤よりも高価になる傾向があります。初期投資としては、最低でも数十万円の予算を超えることもあります。
また、初期に購入したもののみ設備資金になり、事業開始後に仕入れる分は運転資金になります。
運転資金とは?


運転資金は、日々の運営に必要な資金を指し、事業の規模や業態に応じて金額が異なります。サロン経営においては、経営をスムーズに進めるためにも適切な運転資金の確保が必須です。
家賃
立地によって家賃の価格は大きく変わります。都心部や人通りが多い繁華街などは、家賃が高額。一方で郊外や住宅街は家賃が安くなります。また、路面店か2階以上などのテナントかによっても金額が変動します。道行く人の目に留まりやすい路面店は、テナントと比べて家賃が高額になる傾向があります。
サロンを出店する際には、サロンのコンセプトから狙う客層を決め、客層に合った地域に出店するという流れになります。しかし若者を狙うサロンを出す場合に都心部に出店する場合、やはり家賃が高額になります。自身の懐事情とサロンのコンセプトに兼ね合いを付けて選ぶようにしてください。
広告費
新規のお客様を獲得するための広告や宣伝は、集客の要です。特に開業して間もなくは、知名度が低いため広告による集客活動が不可欠です。主な広告方法としては、予約サイトへの掲載、SNSでの情報発信、地域のフリーペーパーへの広告掲載などがあります。例として、ホットペッパービューティーに広告を掲載する場合、各プランにかかる月額費用が必要になります。SNS広告においては、InstagramやFacebookのターゲット広告を活用することで、特定の地域やターゲット層にピンポイントでアプローチすることが可能です。広告の種類や選択するメディアによって、必要となる広告費は大きく変わるため、事前にしっかりと予算を組むことが重要です。
自身の人件費
一人サロンの場合、初期段階では自身の給与や生計を支えるための資金を確保する必要があります。事業が軌道に乗るまでの期間、収入が不安定になることも。備えとして、最低でも3ヶ月分以上の生活費を運転資金として確保しておきましょう。例えば、月々の生活費が30万円とすると、3ヶ月分では90万円の運転資金が必要となります。さらに、繁忙期や閑散期による収入の変動を考慮して、余裕を持った資金計画を立てるようにしてください。
資金の集め方


サロンを開業するための資金調達は、経営者にとって大きな課題です。資金調達の方法を知ることで、開業の成功確率を高めることができます。
自己資金
自己資金は、自分自身の持っている貯蓄や資産をビジネスに投じる方法です。自己資金における最大の利点は、利息負担や返済の必要がない点です。
しかし、全ての資金を自己資金で賄うのはハイリスク。例えば、自身の貯蓄が500万円ある場合、そのうちの70%程度の350万円を投資し、残りの150万円を非常時の資金として確保するなど、万が一の事態に備えて一定の金額を残しておきましょう。
融資
銀行や金融機関からの融資は、資金を調達するための一般的な方法です。融資を受ける際は、事業計画書や収支予算書を提出する必要があります。また、担保や保証人を求められることもあるため、事前の下調べと準備が必要です。
融資してくれる金融機関には銀行のほかに、日本政策金融公庫があります。公庫の創業融資であれば無担保・無保証で融資を受けられます。また事業計画の相談等も行っているため、創業の強い味方になってくれます。
ほかにも地域によって制度融資を行っている場合がありますので、融資を検討する際には自身が創業する地域についても一度調べてみると良いでしょう。
クラウドファウンディング
近年、スタートアップや中小企業の資金調達方法として注目されているのがクラウドファウンディングです。インターネットを通じて多くの人々から少額の資金を募り、リターンとして商品やサービスを提供することで資金を集める方法です。例えば、美容室開業を目指している場合、施術やサービスをリターンとして設定し、多くのサポーターから資金を募ることが考えられます。
クラウドファウンディングの実施方式には2種類あります。募集期間中に目標金額を達成した場合に資金を受け取ることができるAll or Nothing型。目標金額の達成にかかわらず、募集期間終了時に集まった資金を受け取ることができるALL In型。双方にメリットとデメリットがあるため、自身に合った方式を選ぶようにしましょう。
資本金1円で創業出来るの?


2006年に行われた法改正により、最低資本金制度が撤廃されたため、資本金1円でも株式会社を設立できるようになりました。改正前の制度では、有限会社は300万円、株式会社は1000万円の資本金が必要でした。現在では有限会社が廃止され、当社のような合同会社という会社形態が誕生しています。
法律上は資本金1円での創業は出来ます。しかし現実的に考えると、個人的にはお勧めできません。
資本金1円で創業すると、融資が受けづらい、社会的な信用が得られない、会社の運転資金が無いなどのデメリットがあります。また、場合によっては銀行口座を作れないこともあります。会社設立直後には決算書が存在しないため、金融機関が会社の信用度を測るには、「経営者の経歴」と「資本金」しかありません。基本的に融資は「事業が安定し、回収ができるか」が審査基準になります。1円で会社は何もできませんよね。
改正前に比べると創業のハードルは下がりましたが、資本金は多いに越したことはありません。
まとめ
美容室を独立して開業するためには、お客様を確保することが最優先。目安としては月間300人以上を目指しましょう。一方で、月間100人以下では厳しい経営が予想されます。一人美容室の運営には、物件代、広告費をはじめとする様々な経費がかかりますので、計画的な集客戦略が重要です。
美容師としてのスキルはもちろん、経営者としてのマインドを持ち、お客様一人ひとりとの関係を大切にすることで、繁盛店を作り上げていきましょう。
よくある質問
独立前にスキルアップのためにおすすめの研修や資格はありますか?
美容師としての基本的なスキルはもちろん重要ですが、経営に関する知識を深めるために、経営学やマーケティングに関するセミナーや研修を受けると良いでしょう。また、美容師国家資格以外にも、ヘアケアマイスターやカラーリストなどの資格を取得すると、お客様の信頼感が増し、集客効果が期待できます。
独立開業の際に必要な資金はどのくらいでしょうか?
開業に必要な資金は立地や店舗の規模、内装のグレードによって大きく変動しますが、一般的には数百万円から数千万円が必要とされています。初期費用以外にも、開業後しばらくの運転資金も考慮に入れる必要があります。
一人美容室のマーケティング戦略はどのように立てれば良いでしょうか?
地域密着型のプロモーションやSNSを活用した情報発信が効果的です。また、口コミを促進するために、お客様満足度の高いサービスを提供することが大切です。リピート率を高めるためには、お客様一人ひとりとの関係構築を重視し、パーソナライズされたサービスを提供することが重要です。
一人美容室のリスク管理にはどのような点を注意すべきでしょうか?
財務状況の厳密な管理が必要です。また、事業を継続するためには、健康管理も欠かせません。予期せぬ事態に備えて、ビジネス保険に加入することも検討してみてください。さらに、お客様からのクレームやトラブルに備えて、法的知識を身に付けておくと良いでしょう。
開業資金はどれくらい必要ですか?
当面の開業資金は、所在地、サロンの規模、選ぶ設備や商品によって大きく変動します。都心部での開業や高級な設備を選択する場合、1千万円以上の資金が必要になることも。一人サロンをミニマムで開業する場合でも500~600万円はかかります。具体的な金額を知りたい場合は、事前に設計士や業者と相談してみると良いです。
融資を受ける際の注意点は?
融資を受ける際の最も重要な点は、返済計画の検討です。銀行や金融機関は、安定した返済能力を重視しますので、詳細な事業計画や収支予測を作成しましょう。金利や担保・保証などの条件から融資先を選ぶことも重要です。
1円での開業は本当に可能ですか?
理論上は可能ですが、実際には融資が下りない、信用が得られないなどのデメリットが多々あります。創業時のお金を抑えたい気持ちもあると思いますが、1円など極端に低い資本金額はお勧めできません。
広告費はどのくらいかかりますか?
広告費の予算は、サロンの立地や狙う客層、コンセプトによって異なります。私の個人的には、売り上げの10%程度が適切だと考えております。

![一人美容室として独立するために必要な顧客数と経費は?[元リク店長が解説]](https://beauty-st.co.jp/media/wp-content/uploads/2023/10/一人美容室として独立するために必要な顧客数と経費は?[元リク店長が解説].png)
