この記事を書いた人
美容師の仕事において、ハサミは欠かせない道具です。本記事では、基本のカット用シザーとセニングの選び方から、サイズ、ハンドルの形状、素材選びに至るまで、美容師が知っておくべきハサミ選びのポイントを解説します。
また、長期的なコストを考慮したハサミの選択や、日々のメンテナンス方法についても触れます。美容師の皆さんが最適なハサミを見つけ、長い相棒とするためにぜひ最後までお読みください。
まずは2種類の基本ハサミを揃えよう
シザー(基本のカット用ハサミ)
美容師にとって、シザーは最も基本的で重要な道具です。カットに使用されるシザーは、髪の質やカットのスタイルによって異なるモデルを持つ美容師が多数。たとえばウェットカット用とドライカット用で使い分け、さらに落としてしまったとき用のスペアも持っている方が多いです。
セニング(すきバサミ)
セニングは、髪の量をとったり、自然な仕上がりを出すために使われるハサミです。特に、日本人は髪質が太く量も多い人が多いため、セニングは必須の道具と言えます。
セニングにはさまざまな種類があり、それぞれに髪の量を調整する能力や仕上がりの質感が異なります。さまざまなお客様の要望に対応するため、複数のセニングを持つ美容師が多いです。
全てのハサミに共通する選び方
自分の手に合ったインチ数のモデルを選ぼう
ハサミを選ぶ際、最も重要なのは自分の手に合ったサイズを選ぶことです。ハサミのサイズはインチ(1インチ=2.54cm)表記されます。
一般的に、美容師は5.5インチから6.5インチのハサミを使用することが多いですが、手の大きさや指の長さによって適切なサイズは変わります。筆者は手が大きかったので7インチのシザーが使いやすいです。
適切なサイズのハサミを使用することで、手の疲れを軽減し、より正確なカットが可能になります。手にフィットするハサミを選ぶことで繊細なカット技術の向上にもつながり、お客様の満足度を高めることができます。
利き手に合わせて選ぼう
ハサミは利き手に合わせて選ぶことが重要です。美容師の約10%は左利き。左利きの美容師は、左利き用のハサミを選びましょう。
ハンドルの形を決めよう
ハサミのハンドルには大きく3つのの形状があり、それぞれに特徴があります。
メガネハンドル(リバース)
メガネハンドルはリバースとも呼ばれる伝統的な形状。両方のリングが同じ位置にあるデザインです。
オフセットハンドル
オフセットハンドルは片方のリングがもう一方よりも低い位置にあるデザインです。これにより、手首にかかる負担が軽減され、より自然な姿勢で作業ができます。腱鞘炎にもなりづらいため、作業量の多い美容師にはおすすめです。
3Dハンドル
3Dハンドルは人体光学にもとづき、三次元的な角度をつけたハンドルです。手首の動きをより自然にするため疲れにくく、長時間の作業に適しています。一方で独特な形状と運用をするため、初心者が最初に使うとクセがつきがちです。
金属の素材を決めよう
ハサミの性能に大きく影響するのが、使用されている金属の種類です。素材によって、耐久性、切れ味、重さ、価格が異なります。
鋼
鋼は最も伝統的な鉄の素材で、優れた切れ味と耐久性を持ちます。鋼製のハサミはこまめな手入れが必要ですが、適切に管理すれば長期間高い性能を保つことができます。
ステンレス
ステンレス製のハサミは錆びにくく、手入れが比較的簡単です。最も多くの美容師に選ばれており、初心者でも扱いやすい素材です。ステンレスだから切れ味が悪いということはありません。
コバルト・ダマスカスなど
これらの高級素材を使ったシザーは耐久性が高く、切れ味が長持ちします。高価ですが、こだわり抜いた一本を持ちたい方にはおすすめ。特にダマスカス柄は見た目にも美しく、所有欲を誘います。
シザーは刃の形で選ぼう
シザーの刃には大きく分けて直刃、笹刃、柳刃の3種類があります。
直刃
直刃は刃が直線になっており、毛が逃げにくい形状です。ザクッザクッと切れるので、ブラントカットや刈り上げなどに適しています。
笹刃
笹刃は刃が外側に向けてカーブを描いている刃の形状です。髪は逃げますが、繊細なカットが可能。スライドカットなどに適しています。
柳刃
柳刃は、直刃と笹刃の中間に位置し、最も多くの美容師に愛用されています。直刃ほどザク切りではなく、笹刃ほど髪は逃げないという特徴を持ちます。
最初のおすすめは直刃
スライドカット等の技術より、まずはまっすぐもってまっすぐ切る基本ができなければなにも意味がありません
と、いうことで綺麗にまっすぐ切るために直刃をお勧めします。
セニングはスキ率と刃の形で選ぼう
セニングは髪を切る量を決めるスキ率と、スキ方が変わる刃の形状を見て選びましょう。
スキ率は15~30%が一般的
セニングハサミは、スキ率(刃が髪をすく割合)によってその効果が異なります。15%から30%のスキ率が一般的で、一般的な仕上げやボリュームの調整に使えます。
スキ率が低いと細かい調整ができ、高いと大胆な量の調整が可能。スキ率が低くても高スキ率の製品と同じ施術が可能ですが、時間がかかります。
刃の向きは正刃と逆刃がある
セニングハサミには、刃の向きが異なる「正刃」と「逆刃」の2種類があります。正刃は普通に持ったときに刃が下を向くと正刃、その逆が逆刃です。
好みで選んでいいと思うので、自分が使いやすい方を選びましょう。なお、メガネハンドルだとひっくり返して使えるので、両方の刃の使い分けができます。筆者はメガネハンドルを使っています。
刃の形は大きく分けて3種類
セニングハサミの刃の形状には、主に以下の3種類があります。
クシ刃
溝なし、フラットとも呼ばれます。クシ刃は刃の先端に溝がなく、クシのような形状をしています。髪が逃げやすいためスキ率が低いシザーに多く採用されており、繊細なニュアンス出しなどで使われます。髪が逃げやすいため、スライドカットにも使えます。
V溝刃
V溝刃は、刃にV字型の溝が刻まれており、挟んだ髪が逃げにくくなっています。閉じたまま引っ張るとお客様は髪が痛いので要注意。スキ率が安定するため、最も一般的な刃形です。
段刃
段刃は、刃が段々になっており、一部の髪を逃がし、一部の髪を捕まえる構造をしています。最近シェアが増えている刃の形状です。
最初のおすすめはV溝刃
V溝刃はスキ率が安定するため、感覚がまだ洗練されていないアシスタントがどの場所にハサミを何回入れるとどれくらいの髪の量になるというのが分かりやすいためおすすめです。
筆者は何においても抜け感があるのが好きなので、絶対に咬まないやつを選んで、研ぎ方もそうしてもらっています。
長期的に出費を抑えるためのポイント
安物買いの銭失いは避けよう
ハサミの購入では、初期投資の価値を理解することが重要です。低価格のハサミは初めは魅力的に見えるかもしれませんが、耐久性や切れ味が劣ることが多く、頻繁な交換や修理が必要になることがあります。
長期的に見て、高品質なハサミは切れ味の持続性や耐久性に優れ、結果的にコストを抑えられます。また、優れたハサミは精密なカットを可能にし、お客様の満足度を高めることができます。
ハサミは安い買い物ではありません。よく検討しましょう。
メンテナンスで切れ味を保とう
適切なメンテナンスは、ハサミの性能を長期間維持するために不可欠です。以下の手順で日々のお手入れを行いましょう。
水洗いと乾拭きで汚れと水分を落とす!
使用後は、ハサミを水で洗い、乾いた布で丁寧に拭き取ります。これにより、汚れや水分が原因で錆びるのを防ぎます。
少量のオイルで切れ味をキープ
定期的に専用のオイルを少量塗布し、切れ味を保ちます。オイルはハサミの動きを滑らかにし、錆びを防ぎます。
余計なオイルはセーム革で拭き取る
オイルを塗布した後は、セーム革で余分なオイルを拭き取ります。ハサミがベタつかず、その後に汚れが付きにくくなります。
ネジの締まりをチェック
ハサミのネジの締まり具合を定期的にチェックし、必要に応じて調整します。緩すぎると切れ味が悪くなり、きつすぎるとハサミの動きが硬くなります。ちょうどいい締まり具合は、真上に向けたときに刃先が1~2cm開くくらいです。
消毒後は注油を忘れずに!
アルコールや熱湯などで消毒すると、塗布したオイルが落ちます。消毒後は乾かしてからオイルを再度注油しましょう。
まとめ|美容師は4~5本のシザーを持っているのが一般的
ハサミは単なる道具ではなく、美容師の技術を最大限に引き出すパートナーです。高品質なハサミを選び、適切にメンテナンスすることで、優れたカット技術でお客様の満足度を高めることができます。
多くの美容師は、さまざまなスタイルやテクニックに対応するために4~5本のハサミを持っています。まずは自分の手に合ったサイズや形状を選ぶことが重要です。
よくある質問
ハサミの切れ味が悪くなったとき、自分で研ぐことはできますか?
ハサミの切れ味が悪くなった場合、自分で研ぐのはおすすめしません。専門的な技術と機材が必要で、間違った方法で研ぐとハサミを傷める可能性があります。プロの研ぎサービスを利用するのが最適です。
ハサミの購入時に保証はついていますか?
多くの高品質なハサミにはメーカー保証が付いています。保証の内容や期間はブランドやモデルによって異なるため、購入時に詳細を確認することが大切です。
セニングハサミと通常のシザーのメンテナンス方法に違いはありますか?
基本的なメンテナンス方法は同じですが、セニングハサミは刃が複雑な形状をしているため、特に細部の清掃に注意が必要です。定期的なプロによるメンテナンスもおすすめします
美容師が使うハサミには保険は必要ですか?
高価なハサミは、盗難や損害のリスクがあります。そのため、専門の保険に加入することを検討するのが良いでしょう。多くの場合、業務用機器保険や個人財産保険にハサミを含めることができます。